本ページでは、本ダッシュボードにおける各種指標の算出方法について説明します。利用時にご留意ください。
耕作者 \(i\) が耕作している圃場 \(j\) の面積を \(a_{i,j}\) 、圃場数を \(m_i\) とすると、耕作者 \(i\) の耕地面積は \(A_i=∑_{j=1}^{m_i} a_{i,j}\)となる。
対象となるエリアおよび階級における耕地面積の「平均」を求める1つめの方法は「耕作者数ベース平均耕地面積」である。これは、\(n\)人の農家が耕作している総耕地面積を、農家数\(n\)で割った算術平均である:
\[ \overline{A}_F = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} A_i \]
もう1つの方法は「耕地面積ベース平均耕地面積」である。これは、各耕作者 \(i\) の耕地面積を耕作面積で重みづけたうえで全耕作者について足し合せ、総耕地面積で割った加重平均である。\(n\)人の農家が耕作している総耕地面積を \(A=∑_{i=1}^{n} A_i\) と表記すると:
\[ \overline{A}_W = \frac{1}{A} \sum_{i=1}^n A_i^2 \]
圃場数についても、\(n\)人の農家が耕作している総圃場数を農家数\(n\)で割った算術平均である「耕作者数ベース平均圃場数」と、各耕作者 \(i\) の圃場数を耕地面積で重みづけたうえで全耕作者について足し合せ、総耕地面積で割った加重平均である「耕地面積ベース平均圃場数」を計算した:
\[ \overline{M}_F = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} m_i \]
\[ \overline{M}_W =\frac{1}{A} \sum_{i=1}^{n} A_i \cdot m_i \]
耕作者 \(i\) が耕作している圃場 \(j\) の座標(投影座標系・メートル単位)を \((x_{i,j},y_{i,j})\)、耕作者 \(i\) が耕作している全圃場の平均中心座標を \((\bar{x_i},\bar{y_i})\) 、ただし\(\bar{x_i}= \frac{1}{m_i} ∑_{j=1}^{m_i} x_{i,j},\bar{y_i}=\frac{1}{m_i}∑_{j=1}^{m_i} y_{i, j}\)と表記する。また、各圃場の座標と平均中心座標との距離 \(d_{i,j}\)を次のように計算する:
\(d_{i,j}=\sqrt{ (x_{i,j}−\bar{x_i})^2+ (y_{i,j}−\bar{y_i})^2 }\)
このとき、耕作者 \(i\) の標準距離 \(SD_i\) は次のように定義される(岡村 ほか 2021):
\(SD_i=\frac{1}{m_i} \sum_{j=1}^{m_i} d_{i,j} \)
標準距離についても、\(n\)人の農家の標準距離の合計を農家数\(n\)で割った算術平均である「耕作者数ベース平均標準距離」と、各耕作者 \(i\) の標準距離を耕地面積で重みづけたうえで全耕作者について足し合せ、総耕地面積で割った加重平均である「耕地面積ベース平均標準距離」を計算した:
\( \overline{SD}_F=\frac{1}{n}\sum_{i=1}^n SD_i\)
\(\overline{SD}_W=\frac{1}{A}\sum_{i=1}^n A_i \cdot SD_i\)
全圃場を外側に5 m広げ、同一の耕作者が耕作する圃場が重なる場合は、それらの圃場を連結して団地とみなした。このようにして求めた各耕作者 \(i\) の団地数を\(p_i\)と表記する。
団地数についても、\(n\)人の農家の団地数の合計を農家数\(n\)で割った算術平均である「耕作者数ベース平均団地数」と、各耕作者 \(i\) の団地数を耕地面積で重みづけたうえで全耕作者について足し合せ、総耕地面積で割った加重平均である「耕地面積ベース平均団地数」を計算した:
\[ \overline{p}_F = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n p_i \]
\[ \overline{p}_W = \frac{1}{A} \sum_{i=1}^n A_i \cdot p_i \]
各耕作者 \(i\) の平均団地面積\(P_i\) は、耕作者 \(i\) の耕地面積\(A_i=∑_{j=1}^{m_i} a_{i,j}\)を、耕作者 \(i\) の団地数\(p_i\)で割ったものである(岡村 ほか 2021):
\[ P_i = \frac{A_i}{p_i} \]
平均団地面積についても、\(n\)人の農家の標準距離の合計を農家数\(n\)で割った算術平均である「耕作者数ベース平均団地面積」と、各耕作者 \(i\) の標準距離を耕地面積で重みづけたうえで全耕作者について足し合せ、総耕地面積で割った加重平均である「耕地面積ベース平均団地面積」を計算した:
\[ \overline{P}_F = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n P_i \]
\[ \overline{P}_W = \frac{1}{A}\sum_{i=1}^n A_i \cdot P_i \]
各耕作者 \(i\) について、当該耕作者が耕作する圃場を複数含む「クラスター」を特定する。クラスターの特定方法としてはいくつか考えられるが、本ダッシュボードではHDBSCAN(Campello et al. 2013)を採用する。いま、このようなクラスターが\(K_i\)箇所特定できたとする。
まず、各クラスター\(C_{i,k}\)に含まれる耕作者 \(i\) が耕作する圃場の面積の合計\(A_{i,k}=∑_{a_{ij}\in C{i,k}}a_{ij}\)を計算する(緑の面積)。次に、クラスター\(C_{i,k}\)の凸包(クラスターを含む最小の凸集合:点線内部)と一部もしくは全てが含まれる、耕作者 \(i\) を含むすべての耕作者が耕作する圃場の面積の合計\(Conv(C_{i,k})\)を計算する(緑+灰の面積)。
そのうえで、クラスターの凸包充填率を:
\(FR_{i,k} = \frac{A_{i,k}}{Conv(C_{i,k})}\)
と定義する。なお、圃場が1つしかない場合は圃場とクラスターが等しくなり、さらにクラスターと凸包の面積が等しくなるため\(FR_{i,k}=1\) となる。このとき、耕作者 \(i\) の耕地密度を \(\rho_i\) を、各クラスタに含まれる圃場の面積の合計\(A_{i,k}\)を重みとして、\(K_i\)箇所すべてのクラスターについて加重平均した値として定義する:
\(\rho_i = \frac{\sum_{k=1}^{K_i} A_{i,k} \cdot FR_{i,k}}{\sum_{k=1}^{K_i} A_{i,k}}\)
なお、\(∑_{k=1}^{K_i} A_{i,k}=A_i\) であることに注意されたい。
耕作地密度についても、\(n\)人の農家の耕作地占有率の合計を農家数\(n\)で割った算術平均である「耕作者数ベース平均耕作地密度」と、各耕作者 \(i\) の耕作地密度を耕地面積で重みづけたうえで全耕作者について足し合せ、総耕地面積で割った加重平均である「耕地面積ベース平均耕作地密度」を計算した:
\[ \overline{\rho}_F = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n \rho_i \]
\[ \overline{\rho}_W = \frac{1}{A} \sum_{i=1}^n A_i \cdot \rho_i \]
岡村伊織・草苅仁・藤栄剛 (2021)『GISによる広域的な圃場分散状況の把握と農地中間管理事業の評価』農業計画学会論文集, vol. 1, no. 1, pp. 29-39.
農林水産省 (2020)『2020年農林業センサス』https://www.maff.go.jp/j/tokei/census/nougin/2020/index.html
Campello, R.J.G.B., D. Moulavi and J. Sander (2013) "Density-Based Clustering Based on Hierarchical Density Estimates." In Advances in Knowledge Discovery and Data Mining, 7819:pp. 160–72, eds. J. Pei, V.S. Tseng, L. Cao, H. Motoda, and G. Xu. Lecture Notes in Computer Science. Springer.
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